タイトル
[ 里山の自然環境の変化と今後の保全について ]
講  師山梨県環境科学研究所
人類生態学研究室 研究員 小笠原 輝氏
緑地計画学研究室 研究員 池口 仁氏
場  所八ヶ岳自然ふれあいセンター
日  時2005年7月10日(日曜日) 13:30〜15:00
天  候



八ヶ岳自然ふれあいセンターと共催で「里山の自然環境」をテーマに講演会を開催しました。講師は山梨県環境科学研究所の小笠原 輝氏 と 池口 仁氏のお二人です。

里山は人の入り難い奥山に対比する意味合いで使われており、薪や落葉や山菜などを採るために入る比較的人家に近い山を指しています。 都留市の里山の自然環境を調査してみると、1960年代の桑畑の減少がきっかけで 自然環境が大きく変わっていった様子が浮かび上がってきます。 養蚕の衰退とともに次第に桑畑の放棄が多くなり、桑は伸び放題で森のようになり、またこの時期に薪や採草や落葉など里山の自然資源を利用する世帯が減少し、 里山と呼べなくなっている例が多くなっています。桑畑の放棄と里山の利用の減少が猿や猪の増加につながっていて、 この頃から農作物の被害が増え始めています。

里山の機能を理解し利用促進するために新潟県では自然体験場が作られましたが、山梨県は学校林に恵まれた地域ですから自然体験の場が周囲にあります。 しかし学校林を有効に活用している例は少ないようです。学校林がお荷物になっているケースもあるようですが、 学校林を利用して現役世代と次世代(子供達)とが一緒に自然とのつきあい方を学び、新しい価値の発見に繋げていってほしいものです。



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本日の講師:池口 仁氏 と 小笠原 輝氏 の挨拶


講演は主にプロジェクターを使って進められました。

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調査した都留市大幡地区の町並み

1960年頃から桑畑が急減していますが、田畑の面積は変化がありません。

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薪や炭で収入を得る生産活動は1970年頃から激減している様子がグラフで示されました。

薪、採草、落葉等の自家消費の利用も年々減少しています。

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山菜、キノコ、栗等の自然資源利用も年々減少しています。

リボンや鳴子などで鳥獣からの被害を防いでいる水田。

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周囲を網で囲んで究極の防御をしましたが
現在は駐車場になっています。

傍を動物が通ると大音響が鳴り響く装置
人にも反応するため不評でした。

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耕地面積の減少(桑畑の減少)とともに猿、猪の出現数が増えてきた様子がグラフで示されました。

カタクリは他の植物が葉を茂らす前の短い時期に葉を広げ光合成をしますが、 木が生長して春先も暗くなると育たなくなります。

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エビネの減少は乱獲だけが原因ではないことが分かってきました。

ギンリョウソウは腐食土の上に生える腐生植物です。里山の落葉が持ち出されなく なったため最近ギンリョウソウがあちこちで見られるようになりました。


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質疑応答で丁寧に答える池口さんと小笠原さん。

北杜市の学校林の現状、エビネの減少は乱獲ではない理由、有害鳥獣の被害等について 質問がありました。エビネは人と共生している一面があり、人が放棄した土地では育たなくなる傾向があります。 また、里山が人と獣の緩衝地帯でしたが、里山が少なくなった最近は玄関や屋根が緩衝地帯になっており、 人と獣の住み分けができなくなってきています。


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