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八ヶ岳自然散策

雪の棒道に座す観音像

写真 【2021年1月】
 隣り町小荒間(こあらま)には戦国時代の戦場跡を記す石碑がある。 そして、そのあたりから八ヶ岳南麓に沿って西へ「信玄の棒(ぼう)道(みち)」と呼ばれる軍用道路が走っており、 往時は人馬がここを通って北信濃経略に向かったことだろう。今ではいいハイキングコースになっている。
 
この棒道沿いに西国や坂東三十三ケ所霊場を模して観音菩薩の石像が、一丁おきに小淵沢ゴルフ場近くまで置かれている。 道中の安全を祈願するほどに人の往来があったわけではない。ただ、黒船到来など世情が騒がしくなった江戸末期の設置なので、 三十三身を示現する観音様の、衆生を救う慈悲を施主は願ったのであろうか。
 
珍しくまとまった雪が降った翌朝、白樺平別荘地の北側を通っている棒道に、雪中の観音像を撮りに行った。 デジカメの利点はその場で映り具合を確認できることだ。周辺には誰もいない。 ひょっとしたらそのうち、スノーシューを着けたトレッカーが通るまえのバージンスノー。 「静謐(せいひつ)」という言葉がぴったりの一隅で、観音像に語りかける気持ちで、しばし豊かな時を過ごした。

(文・写真 高木 宥)

このページは、「 八ヶ岳ジャーナル」紙に寄稿した記事を掲載しています。
 
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