【2021年7月】
地元山梨の名前がついた希少な植物に出会ったのは初夏だった。
山野草の観察を始めて十数年、初めての出会いに興奮したことを覚えている。
「甲斐の国のリンドウ(竜胆)」ということで命名されたとの説もあるが定かではない。シソ科キランソウ属なので花が似ている仲間は多いが、
リンドウとは全く関係性がないことは明らかである。遠目に見た人がその色合いからリンドウと間違えたとも言われているが、
それが事実なら随分慌て者がいたものである。リンドウが訛ってジンドウになったことは確からしい。
全国に分布する日本固有種だが個体数は少ないので、出会えた方は大変幸運である。
一人密かに会いに行く心情が理解できるかもしれない(環境省・山梨県ともに絶滅危惧Ⅱ類)。
(文・写真 渡辺克洋)