【2024年6月】
5月下旬、花の便りに釣られて、観音平から編笠山へ向かうと、ミツバツツジをはじめとした花たちが迎えてくれた。
マイヅルソウだ。サクラだ。と写真に収め、雪の残る南アルプスの眺めを楽しんでいるうちに山頂に辿り着く。
この頃には足元を彩っていたスミレも姿を消し、時間が巻き戻ったように雪が現れる。
季節を早送りするべく急いで青年小屋方面へ下ると、苔の中に小さな緑の花を見つけた。
葉も出ていない細い枝先に花だけがぶら下がり、気付かず見過ごしてしまいそうな慎ましさだ。
おかげで撮影もひと苦労で、初めて出合った時はピンボケ写真しか撮れず名前も調べられなかった。
後年同時期に再訪し、進化したスマートフォンでピントの合った画像を収める事に成功し、
ようやく「ヒメウスノキ」という名前が分かった次第である。
(文・写真 川嶋裕子)