【2017年5月】
ホソバノアマナは亜高山帯の高原に、真先に春を告げてくれる花である。花期がほぼ同じである華やかなサクラソウの陰で、
存在感を主張することもなく奥ゆかしく咲いている可憐な姿には心打たれる思いがする。
白地に緑の線を伴った花自体は地味であるし、20センチ前後の花茎も細く華奢で、あたかも周囲の支えを求めているような風情ですらある。
分布自体は北海道から九州までと広範囲で我々が居を構える八ヶ岳南麓でも出会うことはできるが、
山梨県レッドデータブックの絶滅危惧II類(絶滅の危険性が増大している種)にリストアップされている希少種であることを認識したい。
地球規模の気象異変や野生動物の食害なども加わって、ますます生息環境が脅かされているもの言わぬ植物達に手を差し伸べて、
また来年も可憐な姿にお目にかかりたいと切に願うものである。 (文、写真 渡辺 克洋)